3.HP Pavilion s3420jp (2015.1.19)

小さくてスタイリッシュ、多機能を凝縮した万能マシン。

パソコン界のシェア争いは熾烈を極めますが、現在のところ1位がlenovoで、その後をHPやDELLが追随しているようです。昨今、パソコンも中国で生産されることが多くなりました。ところが、HP製のパソコンは日本HPが国内で製造しています。その高い品質をアピールするかのように、「MADE IN TOKYO」のシールがでかでかと貼られていたりします。一時期、家電製品にも日本製という文字を強調したシールが貼られていましたが、これには個人的に大いに抵抗があります。意地悪な目で見れば、他にアピールする点が無いことの裏返しにも見えるからです。しかも今や日本製と銘打っても、その品質はかつて程高くはありません。激しいコスト競争にさらされた結果、もはや国産と言えども十分な品質を確保することが難しくなったのです。だからあえて日本製と強調することに、最近では拒絶反応さえ覚えるようになってしまいました。

それはさておき、私は何でも小さい物が好きなので、HPのパソコンの中でも今回紹介する小型パソコン、Pavilion s3000シリーズが大のお気に入りです。デザインもなかなか洗練されていて、ハードウェアもバランス良く搭載されています。BTOも充実していて、好みの仕様にできる点も良いと思います。その甲斐もあってか、s3000シリーズは息が長く、s3000~s3800まで続いています。100番単位で進化しており、大きく分けてインテル系CPUを搭載した40番とAMD系CPUを搭載した20番があります。開始時はs3020jpとs3040jpといった具合です。

手元には色々なモデルが5~6台ありますが、とりあえず中間のs3420jpにスポットを当ててみようと思います。CPUにはAMD系のAthlon 64 X2、Sempron、Phenomのバリエーションが用意されています。価格と性能面でAthlon 64 X2が中心となるモデルでしょう。構成としては、DVDスーパーマルチドライブ、160~320GBのHDD、2GBのRAMが一般的なようです。本機にはポケットメディアと呼ばれる、2.5インチHDDを内蔵する小型のHDDユニット(外付け)が入るスロットが用意されていて、リムーバブルメディアとして使える点もユニークです。USBは前2つに後ろ4つと十分で、ギガビットLANや小さな筐体ながら拡張スロットも2基(PCI-E(16)×1、PCI×1)備えています。フロントパネルには各種記録メディア用リーダーがあり、オプションには無線LANカードやグラフィックカード、TVチューナーまでもが用意されていて、まさに至れり尽くせりです。ここまで来ると、内部の発熱と電源容量が気になります。これらは後述するとして、とにかく小型だから使い勝手が良いのです。机の端に置けばほとんど邪魔にならないし、電源内蔵だからACアダプタを使用する煩わしさもありません。まさに日本人好みに凝縮したパソコンだと言えます。OSはWindows Vistaなので、メモリーは当然2GBは必要になります。動作も結構キビキビしていて、普段の使用には特に不満はありません。用途を限定することなく、あらゆる場面で使える優等生だと思います。

写真はグラフィックカードを搭載した状態です。排他的利用のためにオンボードのモニター出力は使えません。小型の割りにインターフェースが充実しているのがわかります。

本機の電源ボタンはフロントパネル上部に付いていて、稼働中は青、スリープ中は橙に光ります。透過光源になっているため光が柔らかく、スリープ中も点滅では無いので目に優しい点が好印象です(時々このLEDがやたら眩しいPCがありますが、視界にあると集中力が殺がれるので避けたいものです。もっとも、ファン等にLEDを多用してあちこち光り輝くPCも最近では流行っていることもあって、目的によってはあえて派手な演出も良いかもしれません。)。電源ボタンは上から押すのにスイッチは水平方向に付いているため、個体によってはかなり押す力が必要になります。もっとも、普段はスリープを利用するのでさほど問題ではありませんが。それよりも度々見かける症状として、DVDドライブのトレイが出なくなるのが問題です。搭載する東芝・サムスン製のドライブは、トレイ開閉用ベルトが経年劣化により伸びて変形し滑るようになります。分解してベルト部分を掃除すればとりあえず復活することが多いのですが、s3000シリーズの筐体は分解がやや面倒です。小さいのでメンテナンス性は良いとは言えず、メモリーを交換するのも大変です。それ以外はまずまずなので、どうにか及第点としておきましょうか。

さて、前述したように本機の最大の問題は発熱です。小型機の宿命とも言えるもので、こればかりは対策が難しいものです。電源を内蔵していて空きスペースも少ないので、むしろ当然の結果と言えるでしょう。電源容量もたったの180Wしか無い(シリーズ初期は160Wでした)ため、夏場となれば猛烈な発熱に悩まされます。拡張カード等装着していれば尚更です。空冷ファン(CPUと電源の2個)は、比較的静音とはいえフル稼働は免れません。特に電源後部からの排熱はすさまじく、火傷しそうに感じるほどです。そのため本機の電源故障は、他機と比べても群を抜いています。もっとも多い故障原因は、やはり電源ユニット内の電解コンデンサの劣化です。頭が膨らんだり液漏れしたりした例をしょっちゅう見かけます。時々マザーボードの不良にも当たりますが、こちらも主な原因は発熱だと思われます。稼働中にグラフィックチップのヒートシンクに触れれば、やはり熱さで火傷しそうになります。本機の弱点が電源であることに間違いはありませんが、修理のために電源を外そうとすれば、ほとんどバラバラに分解するしかありません。メンテナンス性は極端に悪くなります。この点はlenovoを見習って欲しいものです。

●劣化した電解コンデンサ
電源ユニット内の劣化した電解コンデンサの例です。手前の3個とコイルの奥の1個の頭が膨らんだり液漏れを起こしています。写真は本体背面側から見ていますが、この一番奥に冷却用のファンが付いています。小口径で風量が十分とは言えず、熱がこもり易くて劣化の原因になっています。MADE IN TOKYOと強調したいなら、もう少し耐久性のある電源を使うべきでしょう。密集しているので部品交換しにくいのも×です。

電源を修理したらまず考えるのは冷却です。カバーを取り去って扇風機で外から冷やすのが簡単ですが、解決方法としては稚拙で何より美しくありません。私が行った対策は次の2点です。1つはHDDを3.5インチから2.5インチに交換(変換用の板金等も市販品有り)することです。できればSSDへの移行が望ましいと思います。当時のHDDは爆熱品も多いので、これだけでも結構効果が上がります。

もう1つは冷却ファンの追加です。筐体が小さいと言っても、全く隙間が無いわけではありません。ちょうどCPUファンと拡張スロットの間に隙間があり、カバーと本体マザーとの間にも隙間があります。簡単なのはカバー側に薄型のファンを付けることです。厚さ1センチで8センチ角のものが、丁度良いサイズになります。止めるのに筐体に穴を開けたく無いので、クッション性のある両面テープで固定します。ファンの電源は大抵12Vなので、DVDドライブのS-ATAケーブルを分岐して利用すれば良いでしょう。12Vを使うと騒音が大きいのであれば、5V側で使用してみることです。風量は低下するものの結構回転します。それなりに冷却効果を見込める上、何よりも静かになるのは確実です。極端に回転数が下がるのであれば、12Vのままで途中に整流用のダイオードを順方向に直列につなぎ、電圧を適当に降下させる方法もあります。1本当たり0.7V程度下がるので、ファンの電圧が8~10V位になるように調整すると良いでしょう。ファンは排気で使うよりも、グラフィックチップに向けて吸気で使う方が良さそうです(排気は上のCPUファンが代行)。

CPUはとにかく省電力型を使うようにします。本機ならAthlon 64 X2 BE-2350辺りが手頃です。グラフィックカードも低スペックには目をつぶり、なるべく省電力型を使いたいものです。USBも本機から直接給電しない方が良いでしょう。これでどうにか実用に耐えるマシンに仕立てられたと思います。本来であれば、メーカー側できちんとした冷却対策をして欲しいところです。そうすればこのシリーズは、名機として後世に語り継がれたかもしれません(ちょっとオーバーか・・・)。それでも自分の中では評価が高いパソコンの一つです。ただし、1点気に入らない点があります。昨今増えているピアノブラック調のフロントパネルです。なにしろすぐに傷はつくし指紋は目立つし、外装処理としては最悪です。そこで、痛んだ表面を光沢のクリアスプレーで塗装してみました。きれいに塗装するためにマスキング処理等面倒ですが、表面が適当にざらついてスレ等も目立たなくなるのでお勧めです。

<追記>
このシリーズには、拡張スロットに付ける各種インターフェースカードが用意されています。中でもDVIとHDMI端子を備えたPCI-Eスロット用のグラフィックカードは、本機のようにRGB端子しか無い機種には必須とも言えるオプションです。カードはnVIDIAのチップを使ったGeForceシリーズの古いもので、HDMIの音声はマザーボードのSPDIF端子からケーブルで直接信号を入力しなければなりません(パススルー方式)。ところがきちんと接続しているにもかかわらず、HDMIでは音声が出力されないことがあります。ドライバ等を色々入れ替えたりネットで調べたりもしましたが、一向に解決策が見出せませんでした。

その後、各種シリーズモデルを扱っているうちに、この問題は本機に限ったものでは無くシリーズ全般に共通する問題であることがわかってきました。それでも原因は不明のままだったのですが、昨日になってようやくBiosの「オンボードオーディオ」の設定が原因であることが判明しました。この設定にはオート、無効、有効の3種があり、デフォルトではオートになっています。これで普通は問題無いと考えるのですが、このシリーズでは有効に設定しないとHDMIの音声が出ないようです。いったい何のためのオートなのかよくわかりませんが、まあ結果オーライと言うことで良しとしましょう。

しかし、手持ちの機種で試したところ、s3840jpだけがなぜか改善しません。機能的に壊れているのも考えにくいので、更に調査の必要がありそうです。インストールしたドライバーの競合や不具合等、他に何らかの別の要因が関係している可能性は残っています。




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